国民の祝日「体育の日」

朝から学校へ行く。

母が先週末から海外旅行に出かけているので私が家事をしている。いつもより早く起きて服や食器を洗う。母が不在の一週間だけの家事だ。さほど嫌ではない。家には父と私とだけが居た。妹や弟は既に家を出たようだ。私も出かけよう。

「もう八時だけど寝てていいの」ずっと寝ている父に声をかける。父は面倒そうにぼそぼそと答える。「休みだ」なるほど。父は休みをとっているようだ。「母が居ないからといって休みなどとらなくてもなんとかなるだろうに」と思いながらも私は家を出る。いつもより早く家を出る。電車に乗る。30分ほど早いせいか客がすこし違っているように感じた。せかせか歩いて学校に着く。ずいぶん早く着いてしまったなと思った。ふと気づく。まわりには誰も居ない。

そして気づく。今日は休みだ。10月13日は「国民の祝日」だ。体育の日だ。

そういえば先週の終わりに友人達と話したような気がした。「三連休だ」と。朝の自分を思い出す。顔から火を吹きそうだ。もし父の頭がさえていたら「休みの日の朝から何をさわやかな顔してるんだ」とでも言っただろう。まぬけである。

いくらなんでも早すぎる。どの店も開いていない。駄目だ。観念する。まさに無駄足だ。諦めて家に帰ることにする。電車の客が違う。スーツの数が少ない。いかにも祝日だ。まぬけだ。

作業メモ

  • expand()のflagで':p'を指定するのと、fnamemodify()のmodsで':p'を指定するのでは動作が異なる
  • expand('%', ':p') と expand('%:p') では動作が異なる
  • Vimの操作体系はそこそこ好きなんだが、それ以外の部分はかなり嫌いといっていい
  • nr2char()はどうして現在の'encoding'に依存するの?ばかなの?

電脳コイルの感想でも書いておくか(ネタバレ注意)

電脳コイル』を見た。全26話。長いね。ちらほらと噂を聞いていたので、そろそろ観ておくか、とそんな流れ。

舞台は202X年の大黒市。電脳メガネが普及している世界。主人公はヤサコ。優しい子と書いてヤサコ。小学6年生。このヤサコが転校してくるところから、はじまる。

子どもたちは、みんなメガネをかけている。メガネをかけていると電脳空間が見える。現実世界の上に完全に被さるように構築された電脳空間。インターネットとは違う。もっと生活に完全に溶けこんでいる空間。主人公をはじめとする登場人物(ほとんどは小学生)は、そこで当然のように遊んでいる。電脳空間のみに存在する「電脳ペット」や、「電脳物質」なども、私を電脳コイルの世界へとぐいぐい引っ張った。

私は特に序盤が好きだ。この何も分からないところに、先にも書いた独特の世界観をガンガンぶつけられる感じだとか、それらを子どもたちが当然のように使って遊ぶ様子だとかが良かった。これらが、すごく良く見えたのには、きっと映像の美しさがあると思う。電脳物質の破損や修復の描写や、しばしば表われるウィンドウ、映像であることが分かるような微妙な粗さをもった電脳ペット、そういった効果や、自然な街の風景など、良いものが多い。

物語は終盤にいくにつれて、序盤の世界感を生かしたものから、伏線の処理へと重点が移ってしまう。序盤に分からなかった部分が明かされていくのは良いが、思い悩むような憂鬱な展開は、小学生という感じがしなくて嫌いだ。序盤の、具体的に言えばフミエが活躍していたころの、回が好きだ。この世界はこういうものだ!と強引に押し付けられ、それを映像の力で引っ張っていかれるような序盤が好きだ。

全体の流れとは関係ない回も好きだ。挙げるなら11話『沈没!大黒市』や13話『最後の首長竜』あたり。

終盤は鬱にさせてくれたり、ムズムズさせてくれたりで、あんまり好きじゃないんだけれども、全体で見れば「かなり良い」と感じた。

私と彼女との距離

「ひろし兄ちゃんって初体験いつなん?」背中から、私の首に腕をまわしながら、彼女は言った。私は動揺した。なぜなら、これが私の妄想ではなく、実際に、現実に起こっていることだからだ。

彼女は妹の友人で、もうずっと前から我が家を出入りしている。私を呼ぶときには、妹のそれを真似して、兄ちゃんをつけて呼ぶ。なぜか、最近はやたらベタベタと私にまとわりついては、「ひろし兄ちゃんとうちは、ニコイチやから」などと、ふざけて言う。ニコイチというのは、二人で一人といった意味の言葉だろう。妹もよく使っている。

その彼女がした質問は、私を動揺させた。私は動揺を見せないように意識した。体が固くなった。とっさに「どうして、そんなことを答えなきゃいけないんだよ」と答えた。

彼女は、私の背中には飽きたようで、立ち上がった。
「もしかして、ひろし兄ちゃんって……ないん?」

ひきこもりで、ネット中毒の私だが、昔は付き合っていた子がいた。私を知る人は疑うかもしれないが、これも妄想じゃない。それもあってか、彼女の質問は、私に経験のあることが前提のようだった。ただ、おそらく、それを前提とした最も大きな理由は、私をからかうためだろう。

「想像にまかせるよ」と笑いながら言った。言った後で「しまったな」と思った。こんな気持ち悪い(彼女が言うところのオタク臭い)表現を使わなくても、なにかもっと良い返しがあったように思えた。

私には女性経験などない。彼女は居た。二度も居た。しかし、何もない。あんまり、そういう気がないのかもしれない。いや、それは違うか。私にだって性欲がないわけではない。それでもやらなかったのは、別に相手に触れたり、触れられたりが嫌なわけではないのだけど、わざわざ、セックスをする必要があるのかな、とそんな気持ちになったからだろう*1。ひきこもりが、物事の選択を迫られた際の心理がよくわかる例だと思う。

以前は、「外見はそこそこ可愛いが、どこか変なところがある」そんな印象だった。最近は、変なところをうまく制御できるようになってきているし、甘えるような口調はもう慣れたものだ。距離を感じる。妹は彼女についての知る必要がないことをよく話す。「最近、彼女は彼氏と別れた」だとか、「彼女は彼氏とやりまくってる。残念だね」だとか。そこから考えれば、実際問題、私と彼女との距離は、童貞と非処女以上、ひまつぶしに童貞かを聞ける未満なわけだ。

「で、ないん?」彼女ははっきり答えろと言わんばかりに、私に迫った。私は「ああ、ないよ」とめんどくさそうに答えた。どこか打算的な自分に嫌悪感を覚えた。

「22で?」彼女は駄目を押した。「ああ、そうだよ」と笑いながら返す。

「じゃあ、今度からは『童貞のひろし兄ちゃん』って呼ぶね」と笑いながら、彼女は言った。「おいおい、それはさすがにやめてくれよ。恥ずかしい」私はまた笑いながら返す。

「あんまり、うちのお兄ちゃんいじめんといてー」妹はいつもの調子で入ってくる。化粧が終わったらしい。出かけるようだ。彼女も妹のあとについていく。

「じゃあ、またねーひろし兄ちゃん」彼女は、そう言って出ていった。時計は午後九時三十分をまわっていた。

*1:しばしば妹が、(私と彼女の居る)私の部屋に入ってきた、というのもあるかもしれない

倒置法ばかり

金曜日はどっと疲れる。週の疲れが一気に来るのだろう。今週は疲れた。何もしていないのに。

正直に「やる気が出ない」と言ったら、「なんか病んでいるな」と友人に言われた。最近、よく二三年前のことを思い出す。あの頃の自分はがんばっていたなって、そんなことを。

疲れのせいにする。やる気が出ないのも、倒置法ばかりなのも。先週もやる気がなかったのに。

鉄腕バーディーの感想でも書いとくか(ネタバレ注意)

10月開始のアニメを録画しはじめた。一話の時点でつまらないものは切るつもりだ。録画しようとして、ふと気づいた。ハードディスクの空きがほとんどない。仕方なく、たまっている分を消化することにした。そこで見たのが『鉄腕バーディーDECODE』。今日は、その感想を書いておく。無意識のうちに、ネタバレしてしまうと思うので、見る予定のある方は注意のほう、よろしく。

最近ちゃんと見たアニメを挙げると『ひだまりスケッチ×365』と『マクロスF』くらいだ。どちらもハッキリ言ってクソだったので。今年はもうダメかなと思っていた。ところが、予想以上に良かった鉄腕バーディーを見て変わった。結論から言えば、「良作」。神とまでは言わないが、変なクセがなく、よく出来ているし、そこそこ面白い。まるで空気だったが、私が見た感じ「良作」だ。

主人公は二人。一人はセンカワツトム。もう一人が、タイトルにもあるバーディー・シフォン・アルティラ。順に紹介する。

まずはセンカワ。恐ろしく特徴のない主人公だと思う。強いていうなら廃墟が好き、という妙な部分はあるが、もう一人の主人公に比べれば、極めて平凡で、特徴というほどの特徴ではない。

次はバーディー。ドラえもんのび太で言うところの、ドラえもん。宇宙人。二つ名は「バーサーカー殺し」。バーサーカー殺しなんて言うと、ゴツイ印象を持つかもしれないが、どちらかというと攻殻機動隊草薙素子をイメージしたほうがいい。見た目には、スタイルの良いお姉さん。別段、凶暴なわけではなく「頭よりも体が先に動く」といった感じだ。地球に居る間、有田しおん、というアイドルをやっているらしい。しおんはひどく頭の悪い感じだ。次回予告は常にこの、しおんがやってくれる。次回予告だけを本編を見ていない輩に見せると、誤解されることうけあいだ。

物語は、この二人の主人公が、体を一つにする(性的な意味ではない)ところから始まる。簡単に説明すると、バーディーがセンカワの体を真っ二つにして、仕方なくバーディーの中にセンカワの人格だけ取り込む。このセンカワが殺される場面は「これなんて『撲殺天使』」という感想を持たずにはいられない*1

絵はすっきりとしていて、動きにすこし特徴がある。声も特に違和感はなく、嫌な感じはない。原作をまったく知らないのもあるかもしれない。伏線なんかもそんなに無理がない。十一話で、強引に最終話用の状況を作ろうとしているあたりは、すこし詰めすぎじゃないのかなと思ったけど、他はペースも問題なく、のんびり、安心して見ていられる。

記憶喪失エンド。ハッピーエンドかと言われれば100%のハッピーではないかもしれないけれど、二期へのつながりとか、納得度で言えば、一番最近見た『マクロスF』なんかに比べればずっとマシだと、良いと断言できる。『マクロスF』のようなクソいエンディングを私は「リトルマーメイド症候群」と呼んでいて嫌いなものの一つにしている。あれはリトルマーメイド症候群にさえなっていないクソ中のクソだ。あんなものを見るくらいなら、バッファローの下痢を耳に入れた方がマシだ*2。もういっそ、ランカもシェリルも二人とも死ねば良かったんだよ。どうせなら、フォールド断層を越えてナメック星に到達、ドラゴンボールでミハエルを再生くらいのことをやれば良かったんだよ。菅野は神。

大きく脱線した。とにかく悪くなかった。クソの後は何食ってもおいしく感じられる、とかそういうのではなくて、堅実で評価できるアニメだと思う。二期が2009年1月らしい。そのときは、放送終了後に一気に見るのではなく、最初から放送を追いながら見たいと思う。これで二期がクソだったら笑うしかない。

*1:念のため書いておくと、撲殺天使とは『撲殺天使ドクロちゃん』のこと。ドクロちゃんはしばしば主人公を撲殺する。バーディーを担当する声優は千葉紗子で、ドクロちゃんと同一。ヒロインがうっかりで主人公を撲殺してしまう、なんてシチュエーションはそうそうない。ちなみに声自体はそんなに似てなかったはずだ。ドクロちゃんの声がどんなだったか、もう思い出せない。

*2:Angry Video Game Nerdより

母はしばしば妹についての愚痴をこぼす

母はしばしば妹についての愚痴をこぼす。今晩聞いたのは、今朝の出来事らしかった。

今朝、妹は唐突に宣言した。「今日は体育祭だ」と。母はもちろん「聞いていない」と反論した。まあ正常な反応だが、状況にはあっていない。さらに、妹はこう続ける。「体操着がない!ゼッケンを付けなければいけないのに!」実際はこんな風にすっきりとした発言ではない。だらだらと普段の不満を間に挟んである感情的なものだ。やかましい携帯の着信と、ズンズンと鳴るステレオの音とに負けないよう、その場に居る者すべてが声を張り上げている、いわば音のスクランブル交差点でのやりとりだ。

そう、母の愚痴は「今朝、交差点に一台の馬鹿な車が突っ込んだ」というものだった。だからといって驚くことでもない。というのは、それは我が家では、さほど特別な出来事ではないからだ。

母は五分程度、妹に対する悪口を言ったあと、続きを話してくれた。

母は体操着を探した。しかし、妹のそれは見つからなかった。かわりに、あろうことか、妹の友人の体操着が二着見つかった。妹には、それを着せ、ゼッケンのために裁縫道具を渡した。縫わずに道具を渡したのは、妹が「どうせ縫ってくれないんやろ!自分で縫う!」などと騒いだからだ。

私は体操着のくだりで吹き出しそうになった。ところが母は、それだけでは終わらないと言う。

洗濯物を干し、縫い上がった妹の体操着を見て、母は絶句した。赤いゼッケンからは、白い糸が伸びている。さらには、左上の角から縫いはじめられた糸が、そのまま右上の角、右下の角、左下の角と続けて縫われている。色はまあ良いとして、縫い方は最悪だ。これでは、長辺に伸びた糸のどれか一つでも切れてしまえば、すべて、ほつれてしまう。

私は吹き出した。我が妹とは言え、頭が悪すぎる。四つの角をそれぞれ一回ずつの計四回で縫えば良いものを、四つの角を通るように一回で縫うなど、非常識すぎる。すべての辺をコツコツと縫っていて完成していないのなら、まだ可愛げがあるが、縫ってあるのは角だけだ。ただの横着である。どうしようもない。

妹は、母の静止も聞かず、体操着を着た。すぐにその意味を悟っただろう。なんせ、着た時点で、長辺の糸が千切れてしまったのだから。「もういい!」と投げた。体操着は母がすべて縫った。妹はそれを着て、散々、悪態をつきながら出かけたらしい。

母の話から光景が目に浮かぶ。妹ならやりかねん。今回の事故を引き起こした妹は「十二月から自炊をはじめる」とも宣言している。せいぜい頑張ってほしいものだ。私は母と妹のいさかいに首を突っ込む気がまったくない。愚痴は面白くなければ聞き流す。