一日一冊『SEの文章術』克元亮

SEの文章術 (技評SE新書)

SEの文章術 (技評SE新書)

今日の一冊は『SEの文章術』克元亮。電車枠で読んだ。本屋に行った際に、目についたので購入。自分の中での最近の関心が、「読み書きや会話といった常識的な能力」にあって、「文章術」のようなキーワードがはいっていたので、ひかれたのだろう。

内容については、目次を見れば、すぐ分かるようになっている。「文章術」の大切さからはじまり、基本的な作文技術に、SEが扱うであろうドキュメントでの注意点と、書く能力の向上させかた、となる。読み終わったときに、どこに一番力を置いているのか、よくわからなかった。おそらく、タイトルが「SEの文章術」だから、ドキュメント作成時の注意点のような部分が中心で、それを補助するための章が前後についているのだろう。もしかすると、マーケティング上の都合なのかもしれない。

『理科系の作文技術』のあとに読むと、軽すぎる感じがしてしまう。基本的な作文技術に関しては、理科系〜と同様のことが書かれているように感じた。例や言葉の易しさから読みやすいのが良かった。

良かった点。なにげなく使っている手法が本という形で、はっきり書かれていると良いなと思った。たとえば、第4章 ドキュメントの作成術 の 二 骨格と本文の作成 で書かれている「目次先行型と本文先行型、それらを組み合わせて作成するのが良い」という話などがそうだ。こういったものが作者の言うところのストック型の情報源(第6章二)として提供されていることは良い。

悪かった点。第7章がしっくりこない。まえがきによると、「SEは、提案書や設計書だけではなく、ウェブサイトを設計したり、コンテンツを更新したりすることも増えています。ウェブサイトの利用特性をふまえ、どのような点に注意して文章を書いたら良いのか、具体的な改善例も示しながら説明します。」との目的で書かれている章が、第7章 ウェブライティングの作法 だ。この章がどうもしっくりこない。

ウェブではつまみ読みされるから冒頭で興味を引け、良い見出しをつけろ、適度に段落を切れ(改行を入れろ)、重要なキーワードは繰り返せ。確かに具体的な改善例だが、これは「SEの文章術」に入れるべき内容なのだろうか。「SEにはウェブライティングが必要だ」と言いきられてしまっている以上、仕方のないことかもしれないが、私にはどうも納得がいかない。

最後の章に配置せず、ドキュメント作成と並列と見れるような配置にならなかったのだろうか。ドキュメント作成とウェブライティングの間に「文章力を向上するには」が入っているのはどうしてだろう。ウェブライティングでは、まったく異質な文章力を求められるのだろうか。

もっと良くするにはどうしたらいいだろう。読み終わって思うのは、文章術(作文技術?)の本質的な部分は、読者を想定し、目的を考えて書くなどの、序盤に書かれた、基本的な作文技術に関する部分に集約されるということだ。そして、それらは『理科系〜』の方がきっちりとしているように、感じている。そうなってくると、この本の価値は何だろう。何をすべきだろう。

この本の売りは「SEのドキュメント(とウェブ?)」と具体例をしぼって、こう書くべきだということが書かれている。そこじゃないかと思う。理科系〜で書かれているような作文技術を、SEの業務で使用されている具体的なドキュメント(ないしウェブ?)を例にとって解説する。そういった方向にしぼっていくのなら、文章術と書くよりテクニック集とした方が合うかもしれない。

840円はやや高いかも。760円くらい。