一日一冊『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂 幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

今日の一冊は『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂 幸太郎。友人曰く「ハズレなし」の伊坂さんの本。図書館で借りた。電車でじわじわ読みつつ、最後は家で一気に読み切った。最近この読み方が多い。

広辞苑のために本屋を襲う。そんな計画に主人公は誘われ、そして乗ってしまう。これは物語のはじまりだけど、これではうまく説明できない。話の流れとしては、二年前と現在という、時間はもちろん、登場人物さえ、ほとんど異なる二つの話が、不思議な感じで絡まりあい、最後に一つの話としてまとまって終わる。そんな流れ。無難。

オーデュボンのときは、細かい話を書いておいてカカシをベースにくっつけたという印象を受けたけど、今回は、後ろから枝分かれさせる形で前へと話を広げていったんじゃないか、そう感じた。

というのは、伏線のはりかたが強引というか、無茶苦茶で、それでも最後が面白いようにまとめられている。読んでいて気持ちよくなるように仕上がってる。どこかつじつま合わせをしないとうまくいかないだろう。だから「後ろから前へと書いていって、つじつまが合わなくなったら、後ろを直して」そんな風に書いたんじゃないかと私は思った。

「境界」の描写が印象的だった。

他人だから知人だから、動物だから人だから、外国人だから日本人だから……。ほかにもタイトルになっている「アヒルと鴨」の例でもそうだ。そういう境界が何気ない会話の中で描かれていたように思う。それに対して肯定や否定があったとは感じなかったけど、「そういう見方もできるのね」ってそんな風に思わせてくれた。

相変わらず会話は面白い。

会話の面白さと、強引にでも伏線をはり、それらをまとめることと、まとめる際にきっちりと「驚き」を持たせること。これらができているから、読後感が良い。すっきりと読める。

税別648円。妥当。まあまあ面白い。