一日一冊『老人と海』ヘミングウェイ, 福田 恆存

老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

今日の一冊は『老人と海ヘミングウェイ, 福田 恆存。図書館で置いていたのが目についたので、借りた。国語の授業か現代文の授業だかで、名前は聞いたことがある。なにやらたいそうな賞をもらってた記憶がある。

老人が漁に出て、大魚と戦って、釣り上げる。だけど、港に持って帰るまでに大魚はサメに食われてしまう。そんな話。たぶん、あらすじにも、このまんま書かれていたので、ネタバレにならないよね。

一番印象的な面が、あらすじにもある魚が損われてしまう点だと思う。(されないけど)ディズニー化したら、まず間違いなく大魚を釣り上げるところで終わるんだろうなと思った。でもこの話は夢の国のお話じゃないので、そこから先も描かれる。苦労して(何日も引っ張られて)釣り上げた魚がサメにいたぶられるように食われていく様子や、そこでも釣り上げたときと同様に、孤独ながらも必死に戦う老人の様子が描かれる。釣り上げるところ、そこで物語としては半分で、折り返しを含めて成立する話だというのは重要な点だと思う。

次に印象的な面が、老人の強さや弱さだ。そもそも、老人という時点で体力的な弱さを抱えている。それに加えて、老人はほとんどの場面で孤独だ。普段仲の良い少年が居るが、今回の漁のほとんどの場面で孤独だ。そして、少年が居てくれたら、と考える様子が何度も描かれる。これらは老人の弱さが見えている場面だ。一方で、老人はひどく強い。先に書いたような状況に置かれながらも、決してひるむことなく、大魚に立ち向かい、諦めず戦い、そして打ち勝つ。これらは老人の強さだ。弱さとそれを上回る老人の強さ。そしてその強さをもってしても、どうしようもない現実──釣り上げた魚をサメに食われてしまう──。それらがつめこまれているから、この話は評価されているんじゃないかな。

個人的にはそんなに面白い話とは思わない。なんつーか、文学文学してて、違う感じがする。いかにも読書感想文とか書かされそうな感じで。「人生というものが圧縮されてる!」みたいな意味不明なことを書かされる感じで。

骨だけを持って帰った老人は、釣れなかった頃に比べて、馬鹿にされなくなったのだろうか。少年は老人を評価していたみたいだけど、どうなんだろ。結局、食べものとしての魚は損われてしまったわけだし、「すごいけど、ねぇ……」みたいにならないものか。

400円。高い、薄さの割に。